私の国【感想】甘さ控えめ(だがそこが良い)韓国時代劇ドラマ
「私の国」をご存じでしょうか。
朝鮮建国期を描いた韓国時代劇ドラマです。
骨太なストーリーと出演者の熱演にうなる観て良かった!ドラマです。
1つ注意があって、
戦闘シーンの描写がえぐいです。
苦手な方は視聴しない方が良いです。
「プライベートライアンが苦手な人は視聴しない方が良い」と書いて伝わるでしょうか。
プライベートライアンの冒頭よりはマイルドだと思いますが、
わたしも生々しい描写が苦手なので、「だいぶえぐいなあ…」と思いながら視聴しました。
戦闘シーンが苦手な人でも最後まで視聴するほど面白い!とも言えます。
視聴後、「私の国」の良さを友人に熱く語りました。
わたしは特に、
だと思います。
「回想シーンの正しい使い方」です。泣かされました…。
今回もネタバレを極力控えつつ、「私の国」の魅力を語りたいと思います。
「私の国」の魅力
「私の国」は製作費200億ウォン、撮影期間9カ月のドラマです。
製作費20億円以上!?
すごいよね。
確かに映像がキレイで、戦闘シーンも(えぐいけど)格好良いです。
映像美もさることながら、わたしはまずストーリーを推したいです。
「私の国」というキーワードが芯にあるストーリー
「私の国」はストーリーの芯に「私の国というキーワード」があります。
正直、視聴前は
「タイトルがちょっとダサくない?」
と思ったのですが、
視聴後は
「このタイトル以外考えられない!」
と思っています。
登場人物それぞれに「私の国」の価値観があり、価値観の違いが見どころの1つです。
わたしは主人公が初めて「私の国」(俺の国)と言うシーンで泣きました。
主人公は平民かつ出世に興味がないタイプで、
他の登場人物が「私の国」というキーワードをちょいちょい発する中、
ほとんど国について語りません。
しかし、あるシーンで、全身全霊、
絞り出すように「俺の国」という言葉を発します。
胸にささりました。
やられた!と感じました。
泣きました…。
「私の国」の脚本はここぞというところに切り札を使ってきます。
わたしは特に主人公が価値観を表に出すタイミングが秀逸だと思います。
素晴らしい。
勧善懲悪ではないストーリー
「勧善懲悪」ではないストーリーも「私の国」の魅力です。
たとえば「水戸黄門」のような、
悪(たいてい悪代官)と善(黄門様ご一行)がはっきりしていて、
弱者を食い物にする悪を善がこらしめるドラマがありますよね。
白黒はっきりしていると観ていて安心しますし、スカッとする!のが勧善懲悪の魅力だと思います。
一方、「私の国」は
善悪のデコボコが少なくて、白黒ハッキリしないドラマ
です。
「こいつほんと悪いな~」と思う悪役もいるのですが、
思想があり、貫いています。
主人公を含めて主人公側のキャラクターも手放しで「善」とは言い切れません。
「世の中こんな感じよな」と思えるリアルさがあります。
善悪に関して全体的にフラットなイメージがあります。(平等という意味ではないです)
「権力者が主人公ではない」韓国時代劇ドラマ
「私の国」は朝鮮建国期を描いた韓国時代劇ドラマです。
しかし、主人公は平民の若者です。
建国の王が主人公じゃないんだね。
歴史の中心人物にあえてスポットを当てない所も作品の魅力の1つだよ。
主人公のソ・フィは妹思いの平民の若者です。
両親は亡くなっていて、病気の妹のヨンを支えながら、明日の食事にも苦労する貧しい生活をしています。
ソ・フィとヨンの父親は「高麗最強の剣士」ソ・ゴムです。
ソ・フィもストーリーが進むにつれてアホほど強くなります。
言い方ェ…。
父のソ・ゴムの存在が登場人物を奇妙な縁でつないでいるのも見どころで、
視聴者を最後まで飽きさせません。
「私の国」のメインキャラクター
「私の国」のメインキャラクターは4人です。
ソ・フィ(主人公)
主人公のソ・フィは高麗最強の剣士ソ・ゴムの息子です。
自身も武術が得意ですが、出世欲がありません。
どういうこと?
ソ・フィは得意の武術で積極的にお金を稼ごうとしないのよ。たとえば勉強が得意な人は文官、武術が得意な人は武官になって国からお給料をもらうのが出世の道だけど、ソ・フィは鍛冶屋をして妹を養ってるの。
結局、妹の薬代のために武科(武官の試験)の受験を決めるのですが、
- 本当に困るまで「武官になる」が選択肢に上がらない
- 自分のために武官を目指さない
…ところが、ソ・フィの性格の一部を表しています。
)野心のない素朴な青年です。
人情に厚く、妹思いで仲間思い。
他人を踏み台にしてのし上がる要素は全くありません。
マンガの王道主人公っぽいです。
ナム・ソノ(主人公の親友)
ナム・ソノは良家の子息でソ・フィの親友です。
文武両道で野心もあるイケメン枠です。
ナム・ソノは良家の子息ですが母親の身分が低い庶子(しょし)です。
庶子ってなに?
妾の息子のこと。
ドラマで描かれる時代、庶子は差別の対象でした。
ナム・ソノの父親のナム・ジョンは野心家かつ国の中枢にいる実力者です。
ナム・ジョンは正妻の息子(長男)を事故で亡くし、
仕方なくナム・ソノを後継者として育てます。
長男を事故で亡くしたとき、
ナム・ジョンはナム・ソノに「お前が事故に遭えばよかった」と言って責めます。
ヒドイ!
ダメな親の典型だよね。
ナム・ソノはソ・フィの親友なだけあって根は「とてもいいやつ」です。
しかし、
- 庶子というだけで世間的に差別され、
- 父親にも認められない
過酷な環境がナム・ソノを苦しめます。
「環境が人をねじ曲げている」という視点でみると、より見ごたえのあるキャラクターだと思います。
「もし環境が違ったら、ソ・フィと野山を駆けていただろうに」
…と思うと「やるせなくなる」のが、ナム・ソノの魅力の1つです。
あとひとつ、ナム・ソノについて説明するなら
「体が強すぎる」
です。
「体が強すぎる」は、ぜひドラマを観て確認してください。
絶対ネタのフリじゃん。
体が強すぎるとしか言えないわ。
ハン・ヒジェ(ヒロイン)
ハン・ヒジェは亡き母親が妓生(きーせん)で、妓楼(ぎろう)で育ったヒロインです。
妓生ってなに?
芸者さんみたいな感じ。
美人で、賢くて、正義感のある女性です。
個人的に、「私の国」の魅力の1つは女性の戦い方のリアルさだと思います。
ソ・フィやナム・ソノが武術(体)を使って戦うのに対して、
素晴らしい。
「ヘチ-王座への道」と比較すると分かりやすいです。
「ヘチ」の最強の登場人物は女性です。
それはそれでワクワクして良いのですが、ファンタジー感は否めません。
弓などの遠隔武器を使うならまだしも、近接武器で最強と言われるのは難しい気がします。
武器同士がかちあったときに、腕力で負けるとしか思えません。
「ヘチ-王座への道」も面白かったです。
一方、「私の国」の女性は武器を持つシーンからして少ないです。
「使えるものを使って戦う」ところがリアルで良いと感じました。
イ・バンウォン(建国の王の五男)
イ・バンウォンは建国の王の五男で朝鮮王朝3代目の王になる人物です。
だいぶ武闘派で、邪魔者は物理的に排除するタイプ。
イ・バンウォンを演じるのはチャン・ヒョクです。
わたしはチャン・ヒョク主演の時代劇ドラマ「輝くか、狂うか」が好きなので、配役のギャップを楽しめました。
「輝くか、狂うか」の主人公も王族の皇子ですが、
情に厚くて愛嬌があり、豪快に笑う演技が印象的でした。
一方、「私の国」のイ・バンウォンは「歌舞いていない織田信長みたいな感じ」です。
どんな感じよ…。
鳴かぬなら「物理的に排除してしまえ」ホトトギス。
冷静でニコリともしないキャラクター(たまに笑うと冷笑)なので、
キャラクターの好き嫌いで言えば「輝くか、狂うか」の主人公の方が好きですが、
「私の国」の配役の巧みさは目を見張るものがあります。
イ・バンウォンの存在感は、
フィ、ソノ、ヒジェの3人の存在感を足してもバンウォンと同等か怪しい
ほど大きく感じるからです。
チャン・ヒョクでなければ出せなかった存在感ではないかと思います。
個人的に、一番アップの力が強いと感じたイケメンです。
扇を効果的に使う演技も必見!格好良かったです。
甘さがほとんどない
「私の国」は色々な意味で甘さがほとんどありません。
- 恋愛要素(恋愛の描写)が少ない
- 夢や希望といった甘さが少ない
- 戦闘シーンがえぐい
「だがそこが良い」です。
恋愛要素(恋愛の描写)が少ない
韓国ドラマといえば恋愛モノ!と思う方も多いのではないでしょうか。
時代劇ドラマも、身分差のある恋愛、障害の多い恋愛が主流です。
「私の国」にも主人公や脇キャラの恋愛要素があるのですが、
描写が圧倒的に少ないです。
主人公がイチャコラするシーンはほとんどありません。
脇キャラのイチャコラの方が多いと感じるほど少ないです。
恋愛ではなく「ストーリーを見せたい」という意思が感じられますね。
ちなみに管理人は主人公の恋愛事情より、
夢や希望といった甘さが少ない
「私の国」は夢や希望といった甘さが少ないです。
これも「ヘチ-王座への道」と比較すると分かりやすいです。
たとえばヘチのあるキャラクターは
「世の中を良くするんだ!」という気持ちで役人を目指します。
動機が壮大で、夢や希望を感じますよね。
一方「私の国」のキャラクターは、
- 主人公のソ・フィは「妹の薬代が欲しいから」役人を目指す
- ソ・フィの親友のナム・ソノは「身分差別のない(自分が差別されない)世の中にしたい」から役人を目指す
- 権力者は例外なく私欲のために権力を求め、執着する
動機が現実的で、夢や希望といった甘さが感じられません。
リアルですよね。
特に建国の王は、
「大義名分」という言葉がしっくりくるリアルさが素晴らしいです。
ストーリーも甘さが少ないです。
主人公のソ・フィは武科の受験資格がないのですが、
ある出来事のおかげで受験資格を得ます。
武科の受験がきっかけとなり、ソ・フィは激動の渦(うず)に巻き込まれていきます。
「棚ぼた的出来事」からどんどん出世していくサクセスストーリー!
…のような甘さは一切なく、
「棚ぼた的出来事」のせいで激動に巻き込まれた
と言うほうがしっくりきます。
コメディタッチのシーンも少なく、手放しで安心して観られるシーンも少ないです。
どういうこと?
「私の国」はストーリーが進むにつれて、主人公や仲間たちが常に危険にさらされるのね。「不穏なのが当たり前」な日常だから、たとえ主人公と恋人の2人だけのシーンでも安心して観られないのよ。
しかし、だからこそ、
つかの間の仲間同士のおふざけやじゃれ合いがキラキラと光って見えます。
ちなみに、
「私の国」で唯一安心して観られるシーンがあります。
「私の国」の数少ない癒し要素、管理人の大好きなシーンです。
2人のシーンで必ず流れる曲があって、その曲が流れると「平和来たぁ~」と思います。ムンボクは良い男だと思いますほんと。
戦闘シーンがえぐい
記事の冒頭にも書きましたが、「私の国」の戦闘シーンはえぐいです。
苦手な人は視聴しない方が良いレベルです。
くれぐれもご注意を。
「だがそこが良い」観て良かったドラマ
「私の国」は、「だがそこが良い」と言いたくなるドラマです。
ここまで「私の国」の魅力を語りましたが、
「私の国」というキーワードが芯にある骨太なストーリー以外、ぱっと見否定的ですよね。
- 勧善懲悪ではない
- 主人公が権力者ではない(設定に華がない)
- 甘さがほとんどない
「だがそこが良い」です。
まだ視聴していない方はぜひ観てみてください。
ではまた!